我が国において交通の自動車化が最も進んでいる地域(地方圏の他の地域もいずれそうなるであろうと思われる)を対象として、そこに現れている自動車保有・使用という現象を、まず世帯のライフサイクルの進行と関連づけて、時間的流れのなかで縦断的、動学的に分析し、モデル化を行った。そして次には、独自のアンケート調査に基づく世帯構成員の交通行動、とりわけ自動車同乗交通の分析、そしてパーソン・トリップ調査データを用いた自動車交通と公共交通、あるいは自動車同乗交通とバス交通の競合性、補完性についての横断分析を行った。以下にその成果を示す。 まず第1に、世帯のライフサイクルの進行と免許保有、自動車保有の履歴に関する縦断的調査を行い、それに基づく自動車複数保有化の構造を明らかにした。調査対象は都市部の戸建持家に加えて、都市部集合住宅と郡部戸建持家とし、比較を行った。 第2に、当該地域を対象としたパーソン・トリップ調査データ(1989年10月実施)を用いて、世帯のライフサイクルステージ毎に、主に免許保有・非保有別に外出率、生成原単位(ネット)、トリップ長等の比較を行い、世帯構成員の属性別モビリティ比較を行った。 第3に、同乗交通の明示的分析が可能なCar-OD調査法の改良とその実施による同乗交通の平日・休日比較分析を行い、同乗交通の発生特性、形態特性、トリップパターン特性を明らかにした。 第4に、以上に挙げた実態分析を踏まえて、自動車保有と使用の要因および因果連鎖を明らかにするとともに、とくに自動車の同乗交通とバス交通の特性比較を行った。
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