本研究は、我が国で交通の自動車化が最も進んでいる地域を対象として、そこで現れている自動車保有・使用という現象を、まず世帯のライフサイクルの進行と関連づけて、時間的流れのなかで、縦断的、動学的に捉えた形で分析し、モデル化を行う。そして次には、Car-OD調査法の改良による、とりわけ自動車同乗交通の分析、そしてパーソン・トリップ調査データを用いた自動車交通と公共交通、あるいは自動車同乗交通とバス交通の競合性、補完性についての横断分析を行おうとするものである。 そこで平成7年度では、平成6年度実施によって得られた調査データおよび分析結果を用いて、自動車保有・使用に関するモデルの構築、およびそれの主要な外生変数となる世帯のライフサイクルステージの変遷モデルの開発を行い、一定の有意性を持った成果を得ることができた。また、自動車保有・使用に係わる人工、社会、経済等の統計指標の集計整理のほか、独自調査に基づくデータの分析、加工を行い、世帯における自動車保有・使用の将来予測に必要な周辺条件の整理等を完了することができた。 上述のように、本研究の進捗状況は概ね順調であると言うことができるが、ただし自動車保有・使用モデルについては、なおその安定性、実用性においていくらかの問題点を残しており、それを用いた精度の高い自動車保有・使用の将来予測はできない状況にある。その原因がモデルのものの構造に起因しているものなのか、データ上の諸問題によるものなのかを明らかにすることが現段階の主要な課題となっている。また、世帯のライフサイクルステージの変遷モデルの開発の際に、ステージの分類方法についての若干の問題点が生じているが、これはモデルの型との関係で考え、解決したい。
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