Navigation systems等の経路誘導方策は、道路交通の重要な制御手段になりつつある。これらの方策は、公共主体がドライバーに経路の走行条件に関する情報を事前に与え、ドライバーの経路選択行動を間接的に誘導することを目的とする。経路情報の役割を明示的に考慮したドライバーの経路選択モデルに関していくつかの研究がなされている。その中で、本申請者は「不確実な経路の走行条件に関して、ドライバーが利用可能な経路情報に基づき合理的な予測を行い期待効用を最大にするような経路を選択する」という合理的期待形成仮説を設け、ドライバーの合理的期待均衡に関して分析を行っている。ドライバーが学習行動を通じて、主観的期待を更新する過程をベイズ学習モデルとして表現し、ドライバーのRE形成過程について分析している。これらの経路選択モデルの目的は、ドライバーが経路選択を繰り返すことにより経験情報を蓄積し、経路走行条件に関する期待を形成するメカニズムを記述する点にある。このような観点から、本研究では筆者等が提案した合理的期待形成モデルを拡張し、経路誘導情報の効果を明示的に考慮した経路選択モデルを提案した。さらに、経路誘導情報の提供がドライバーの経路選択と期待形成に及ぶ影響を把握するための分析枠組を提示し、ドライバーの望ましい経路誘導をめざした情報提供システムの設計方法を提案した。平成7年度では、初年度に実施したサブシステムに関する研究成果を総合し、ドライバーの効率的な経路誘導をめざした交通情報システムの開発めざすこととする。本研究は当初の予定どおりに進捗しており、研究目的・研究計画・方法に修正を加える必要はないと考える。
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