物資流動とは、物資の生産活動や商取引活動の中で種々の産業間を地域間で移動する一連の流れである。したがって、多くの点で人の移動であるパーソントリップとは異なる特性を持つにもかかわらず、従来の物流需要予測に関する調査研究では、その特性が比較的明瞭であるパーソントリップの需要予測に関する研究成果を適用するのが一般的であった。しかし、その需要予測モデルはできる限り経済理論に整合し、産業や経済構造、立地の変化予測などにも対応できるような分折フレームに基づくのが本質的と考えられる。本研究では、物流需要の予測手法に焦点を絞り、以下の成果をあげた。 (1)地域間産業連関分折のフレームの中で、各産業の生産する財の生産量と空間的価格の均衡解を得ることのできる地域間産業業種間物流需要予測モデルを構築した。 (2)荷主と輸送業者の異なる輸送経路選択行動規範に基づく輸送手段/ロットサイズの同時決モデルを開発した。 (3)全国貨物純流動調査などの物資流動に関する既存データと独自に作成した輸送サービスデータを用いて、これらのモデルを特定化し、現況再現性、実用可能性について検討を行った。 将来の物流需要の予測とそれに対応した物流システム計画を行う総合的物流システムの構築を行うべく、物流調査・分折手法の再構築と新たな物流需要予測体系を提案することが今後の課題である。
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