本研究の第一の課題は音場に関する能動的騒音制御の問題であった。本研究において目指している戸外での能動的騒音制御において、主要な空間的形態を占めると考えられるものは3次元的空間であるが、本年度においては実験的、理論的(主に数値シミュレーションによる)に道路交通騒音の音源である自動車を点音源とみなした場合、また3次元的空間が半自由空間である場合について検討した。本研究の論理的な基盤であるJMC(Jessel-Manginate-Canevet)理論を実際に展開しうるようにするためには、JMC理論の中で考えられている2次音源の配置を離散的にすること、及び個々の2次音源であるtripole(三極子)を構成するmonopole(単極子)間を有限な距離で配置しなければならない。本年度においては数値シミュレーションによって、その適当な間隔の条件について明らかにした。また、解析的な理論展開も行った。 本研究の第二の課題は実際の実験システムに関するディジタル信号処理技術上での問題である、tripole(三極子)を多チャンネル構成となるように配置し、その出力の位相、振幅をコントロールする技術を開発することである。本年度ではこの課題に関しては基礎的な、従来、本研究者が行った手法を簡単化するためのアルゴリズムについて検討を行ったが、なお検討が必要である。しかし、本研究の科学研究費によってその開発環境が改善され、進捗が著しいのは喜ばしいことである。
|