1.フミン酸共存下での溶液中アルミニウムの存在形態の分析 溶出アルミニウムの土壌溶液中での存在形態を分析する方法として、イオンクロマトグラフィを応用したポストカラム誘導化法を採用し、フミン酸共存下での有機性アルミニウム錯体の定量および錯体形成への影響因子について検討した。その結果、溶液pHの低下によって錯体形成能が低下することが示された。これは土壌が酸性化することによって土壌容液中に溶出してくるアルミニウム量が増加するという従来の知見に加えて、腐植物質とアルミニウムとの錯体の形成によるに解毒作用の低下を新たに示す結果であり、生態系への影響が土壌の酸性化の進行にともない加速度的に増大する可能性を示唆するものである。 2.土壌環境への酸性雨の影響を評価するモデルの構築と将来予測 海外でいくつか開発されている土壌酸性化評価モデルのうちで日本の森林土壌に対する適用性を考慮し、オランダで提案されているSMARTモデルを参考モデルとして、新たに森林土壌酸性化モデル(修正SMARTモデル)を構築した。さらに、構築した修正SMARTモデルを単純化することにより、カラム実験によって検証することのできるプロセスからなる、検証モデルを再構築した。検証モデルによるシミュレーション結果は、土壌酸性化に伴うカラム流出液中の水素イオン濃度やアルミニウムイオン濃度および塩基性陽イオン濃度の変化を定性的・定量的に良く再現しており、用いたパラメータの値についても現実的な変動範囲内にあることが示された。また、酸性降下物量に関するいくつかのシナリオに基づいて修正SMARTモデルを用いた数値シミュレーションを実施し、日本における森林土壌酸性化の将来を予測した。
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