生物化学的機能を付加した急速ろ過における各種微量有害成分の除去の可能性、機構、動力学の基礎的な検討を行った。得られた結果は次のとおりである。 1.硝化・有機物酸化の低濃度2成分系における除去特性および速度論的な検討:単成分系と比べて除去のプロフィルはほとんど変わらず、良好な除去特性を示した。除去速度から見てもほとんど競合はない。 2.マンガン(Mn)と界面活性剤(DBS)の各単成分系における除去特性: (1)MnとDBSの分解に関与する微生物は比増殖速度が小さく、1〜2カ月の長期間の馴養が必要である。ただし、Mnについは一旦除去が発現すると安定した状態が保たれる。DBSの除去はMnのそれに比べて不安定である。 (2)通水速度、濃度変動、逆洗の短期的な影響は大きい。ただし、定期的な逆洗を継続すればその影響は次第になくなり、安定な除去を期待できる。 3.マンガン、界面活性剤、アンモニアの多成分系における除去特性:MnまたはDBSの生物学的除去特性は、アンモニア硝化と競合してこれに妨害される結果となった。その機構について今後検討する必要がある。 低濃度系を対照とした多成分系の動力学モデルの可能性:単成分系の非定常生物膜モデルを多成分系へ拡張することを検討した。しかし、生物膜の棲み分け、生物反応諸係数および逆洗の取扱いについて問題が残り方向性をまとめたにとどまった。さらに検討してゆく予定である。
|