平成6年度は、フェノール分解菌を培養する生物模型反応器としてエアリフト型3相流動床(塔径5cm、塔長100cm、付着担体φ0.5mmの粒状活性炭)と浮遊増殖型反応器として4系列のケモスタット(ガス循環による混合、容積1.0L)にフェノールを単一炭素源とした人工基質を用い、以下の手法でフェノール分解菌が生成する溶解性細胞外代謝物(以下ECP=ExtraCellular Products)の化学的構成成分の分離、ECPの分類と反応器内での役割について明らかにした。 1)フェノール分解菌の培養とECP試料の採取 4系列のケモスタットは、水理学的滞留時間を0.25〜10.0日まで4段階に設定して運転を行ない、定常状態での炭素の物質収支からそれぞれのケモスタットにおけるECPの蓄積量を評価した。ECPは、0.20μ孔のメンブランフィルターを通過したフェノール以外のTOC成分とした。3相流動床は、生物膜の形成後、まず負荷をゼロの条件で運転を行ない、段階的に負荷を上昇させながら、その負荷における定常状態のECP蓄積量を測定した。 代謝物構成成分の分離のためのECP試料は、基質の分解に連動して生成する代謝物(以後UAP=Utilization Associated Products)と細胞の分解に依存して生成する代謝物(以後BAP=Biomass Associated Products)の生成がそれぞれ卓越する運転条件の反応器から採取した。 2)代謝物構成成分の分離と化学的特性 それぞれUAPおよびBAPが蓄積した試料を採取し、ECPの構成成分の違いからUAPとBAPの分類を試みた。ECPの構成成分の分離は、以下の手法で行なった。試料の前処理として透析・濃縮を行なった。次にゲル浸透クロマトグラフィー(Sepharose CL系、バイオゲル系)、陰イオンクロマトグラフィー(DEAE Sepha dex系)を適宜組み合わせることによって分子量分画を行なった。クロマトグラフィーによって得られた各フラクションは、220、260nmの吸光度、TOCを測定した。さらに分画成分は、糖/蛋白質比、ウロン酸、構成糖分析を指標として化学的特徴を明らかにした。
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