研究概要 |
本研究は、水理学的滞留時間を0.5,2,8日に設定した3系列ケモスタット型反応器及び有効容積1.4Lのループ循環型反応器(0.5mmの活性炭を付着担体とする)に、フェノールを単一エネルギー源とした模擬排水(COD濃度714mg/L)を用いてフェノール分解菌の培養を行い、プロセス内で生成する細胞外代謝産物(ECP)の構成成分の化学的性質について検討した。 1.ケモスタットの運転状況と代謝物の分画条件 処理水中の蓄積ECP濃度は、0.45μm孔メンブランフィルターを通過するフェノール以外のCOD成分とした。3系列のケモスタットとも処理水中にはフェノールは検出されず、除去率は100%であった。処理水中に蓄積したECP濃度は3系列の反応器は129mg/L(HRT-0.5d)、80mg/L(HRT-2d)、96mg/L(HRT-8d)であった。代謝物は濃縮・脱塩の前処理を行ってゲル浸透クロマトグラフィー(セファロースCL-2B(分画範囲7×10^4〜4×10^7)とバイオゲルP-60(3×10^3〜6×10^5)を連結)により分画し、培養SRT条件の変化によるECPの構成成分の違いを明らかにした。 2.ECPの構成成分の検討 フェノール分解菌の分泌するECPは、概ね3つの分画に分離できた。すなわち、分子量数百万〜数千万の糖質を多く含む成分(第1画分)、分子量数十万〜数百万の不飽和結合を持つ糖質(第2画分)、蛋白質でない成分と分子量数万以下の多量の蛋白質を含む成分(第3画分)であった。HRTを0.5日に設定した系では、第1画分と第3画分の蓄積が卓越したが、HRTを8日に設定した系では第2画分の生成が多く、第1、2画分はわずかであった。HRTを2日に設定した系は3つの画分が確認され、HRTの0.5日と8日の中間的な構成であった。HRTを0.5日に設定した生物膜型反応器内に蓄積した有機代謝物は、ケモスタット内とほぼ同様に3つの画分に分離できた。しかし、その分離パターンはHRTを0.5日に設定したケモスタットのものよりも、むしろHRTを2日や8日に設定したものと酷似していた。
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