本研究において、以下のことが明らかになった。 (1)試験体の破壊性状は5通りに分けられた。 (2)溶接入熱・バス間温度は実状行われている程度でほぼ適当である。 (3)同鋼種・同部材、同ダイアフラム形式において、スカラップ工法よりノンスカラップ工法を用いた方が耐力・変形能力ともに優れた値を示す。また、幅厚比が小さく局部座屈の影響を受け難い梁部材を用いた場合、内ダイアフラム形式のノンスカラップ工法を用いることで、十分な変形能力が得られる。 (4)先組み溶接組立H形断面梁及び圧延H形断面梁を用いる場合、裏当て金にはクレータフィラ溶接を必要としない三角柱状スペーサーを挟み込んだものが最も優れた変形能力を示す。その次に45°カット、1/2カットの順に変形能力が優れている。 (5)スカラップ工法、ノンスカラップ工法ともに内ダイアフラム形式の方が優れた変形能力を示す。また、通しタイアフラム形式のノンスカラップ工法では、開先をとる際にウェブを切り落とすと、ショートビ-ドとなるクレータフィラ溶接の影響を受けやすく、スカラップ工法と同等程度の変形能力しか示さない。 (6)ダイヤフラム厚は、梁フランジより板厚を1サイズ厚くした方が同厚よりも変形能力は優れている。 (7)ノンスカラップ工法の場合、溶接欠陥の発生防止、より優れた変形能力の確保という点から、高度な技術を要するクレータフィラ溶接は、避けた方がよい。もしも、クレータフィラ溶接をする場合には、靱性が過剰に劣化しないよう十分注意する必要がある。 (8)以下の条件を満たすディテ-ルは最も優れた変形能力が得られると思われる。さらに、設計・施工・メーカー・コストのどの面からも最も有用なディテ-ルとなり得ると思われるため、ノンスカラップ工法における梁端ディテ-ルとして推奨する。 1)開先をとる際は梁ウェブを切り落とさない。 2)裏当て金は隙間なく各部材、特に梁フィレット部に密着させ、開先内の形状を一定にする。 3)通しダイヤフラム形式の場合は、ダイヤフラム厚を梁フランジの板厚よりも1サイズ厚くする。
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