この研究は、震源、伝播経路地盤、建物近傍の表層地盤、上部構造系を一つの総合系と考えた場合の部分特性と見なし、これらの部分特性の評価の上に立ち、構造物の耐震設計を行う問題に対して、地盤振動、地震動作成の検討を行っている。このような観点からの耐震設計を目指すには、大きく分けて、震源から敷地地盤までの地盤震動および地震波動生成に関する問題を工学的観点から明確にする必要がある。この研究では、地盤震動の問題では、点震源の震源から伝播して来る波動の不整形地盤内での伝播特性の原理法則を明確にし、この結果を設計用地震動作成に反映することを試みている。又、強震時に表層地盤は非線形状態に入る現象を、非線形波動伝播特性問題として捉え、実験で示される履歴特性を持つ多層一次元地盤モデルを想定し、地盤の卓越周期の長周期への移動、地震動レベルの低下を明確に定量的に評価した。一方、地震波動生成については、工学的立場から、設計の対象となる大きな断層面を想定し、断層面上で破壊の起こる場所から観測点までに到達する波動生成について地盤モデル、震源モデルのパラメータを変動させて詳細に検討を行い、地震動特性の構成に共通となる法則を示した。この法則に基づいて、千葉県東方沖地震(1987)、兵庫県南部地震(1995)のシミュレーションを行った。このシミュレーションでは一つの震源モデルを一つの観測記録の一成分のみから規定し、この一つの震源モデルと、余震観測、地盤調査によって推定された地盤モデルのグリーン関数から作成した地震動が観測地震動を良く再現出来ることを確認している。この成果を利用すれば、震源・地盤・構造物を総合系と見なしたより合理的な耐震設計の実現を可能にすると考えられる。
|