研究概要 |
本研究は,骨組を構成する部材の強度分布に応じて各構造要素の損傷分布を予測する方法を確立し,部材の強度分布および復元力特性と骨組の地震応答の直接的因果関係を明確にすることによって,部材の復元力特性に応じた耐震安全性の評価基準・部材の必要性能を明らかにしようとするものである。本年度は,損傷分布の基本的法則性について検討した他,実鋼骨組の地震応答解析によって損傷集中要因の定量化についても検討を始めると共に,研究の最終段階で本研究の合理性検証に利用する詳細な鋼骨組の地震応答解析プログラムの開発を行った。 損傷分布の基本則については,複数要素に損傷が分布する単純な振動系としてせん断形多質点系や魚骨型の骨組みを対象とし、構造要素の復元力特性が完全弾塑性型の最も単純な場合について検討した。その結果,地動による入力エネルギーの各要素への損傷分布則を,任意の振動系に適用可能な一般的な形で定量化した。この研究成果は現在公表の準備を進めている。また1要素内での正負2方向への損傷分布についても,一質点系の地震応答解析結果を元に検討し,その研究成果は日本建築学会九州支部研究報告集(平成7.3)に投稿している。 実鋼骨組における損傷集中要因の定量化,および,大地震時の損傷の分布・集中特性については,大阪大学の井上一朗教授と共同で数値実験を続けており,その成果の一部は鋼構造年次論文集(平成6.11)に公表した。 数値実験用地震応答解析プログラムについては,大阪大学多田元英助手と共同で開発を進めており,現状での成果は情報・システム・利用・技術シンポジウム(平成6.12)に公表した。また,その応答解析結果から,接合部パネルの挙動が鋼骨組の地震応答に及ぼす影響が非常に大きいことが明らかになったので,更に詳細に接合部パネル挙動を追跡できるようにプログラムを修正した。
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