研究概要 |
本年度は次の3つに重点をおいて研究を行った。 1.台風時に見られる突風を風洞において再現する方法の開発。 2.突風とそれに伴う風圧力との関係の解明。 3.突風に伴う流れの変化と風圧力の関係 1については,昨年度明らかになったフェンスの後流と自然の突風の類似性に注目し,フェンスの大きさと設置位置による突風性状の変化を風速測定によって明らかにし,自然の突風を作り出すための実験上の要点を把握した。その結果,模型の大きさに対応した適切な突風を作成できることが明らかになった。 2については,昨年と同様に,突風の影響を最も受けやすく,また台風時においても住宅などの小規模建物の被害が最も集中している部位である屋根に作用する風圧力と突風との関係を境界層風洞実験によって調べた。取り上げた屋根は最も基本的な陸屋根である。屋根に風が斜めから当たる時,屋根面上には円錐状の渦が形成され,これに伴う圧力低下によって屋根面上に大きな負圧が作用し,これが台風時の瓦などの屋根葺材の飛散や屋根全体の浮き上がり等の原因になることは,これまでの多くの調査から明らかとなっている。実験の結果,風上からの突風の動きに同調して強い円錐渦が屋根面上に形成されることが明らかとなった。なお,突風の性状によっては屋根の片面にしか円錐渦が形成されなかったり,あるいは形成された円錐渦が引き続く突風時に吹き流される現象も生じることが判明した。また,吹き下ろしの状況で突風が屋根面に当たる場合には,通常負圧が作用する場所に先ず大きな正圧が作用し,つぎの瞬間に円錐渦形成による大きな負圧が作用することが明らかとなった。台風時に非常にしばしば観測される軒の飛散は,このような揺り戻しのような風圧力と密接な関係があると考えられる。 3についは今年度に初めて行った実験である。陸屋根上にスリットを設け,そこから煙を吸い出し,赤外線レーザーシートで可視化し,CCDカメラによって流れの状況を観察した。この実験により,突風によって形成されるあるいは吹き流される円錐渦の状況などを鮮明に捉えることができた。円錐渦は,突風に伴う風向の変化によって左右に揺らぐばかりではなく上下にも変動し,これが高周波数の急激な圧力変動を生む原因であることが予想された。
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