本研究は、本来アクティブ制振構造のためのアクチュエータであるAMD(Active Mass Damper)を、建築構造物同定のための加振源として利用し、線形回帰モデルを用いて構築した制御モデルから、実際の制振システムを構成し、その有効性をシミュレーションおよび実験によって、検証するものである。研究の成果として得られたことを以下に整理する。 1.構造物の固有振動数、減衰定数の推定に当たっては、加速度データに比べて、速度データの方が精度の点で、より良い結果を与える。速度データを用いると、低次モードが強調されるため、同定しやすいモデルとなる。とくに実験においては、速度データは加速度を積分して求めたため、積分時のロ-パスフィルタの効果が発揮され、高周波の雑音の除去に役立ったことも理由として挙げられる。 2.固有振動数の同定に比べて、減衰定数の方が同定しにくく、データ数が特に少ない場合は、精度の点でかなりの差が見られる。 3.同定した低次モードから制御モデルを構築し、H^∞制御を用い、ロバスト安定な制御が行われていることを確認した。実験は、4層のせん断モデルに対して衝撃応答試験により行い、シミュレーションとの対応が取れていたことを確認した。 4.この同定手法は、常時微振動測定による同定結果との比較を行うためのもう1つの手段を提供することにもなり、今後は両者の比較の応用する予定である。
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