山岳部・丘陵地の占める割合が多く平坦地の少ない日本では、都市の成長過程において傾斜地を利用する例が多く、都市への人工集中と相俟って、丘陵・山地の傾斜地や台地の崖周辺にも、造成された住宅地が拡大している。このような傾斜地が地震を蒙る場合には、増幅された強震動や地割れ・斜面崩壊・岩犀流等の地盤災害、またそれに伴う人的・物的被害により、近年の被害地震においてもしばしばその脆弱性を露呈している。 そこで、本研究は、日本の代表的な斜面都市の一つである長崎市を対象に、地理情報システム(GIS)を用いた斜面崩壊危険度、液状化危険度、表層地盤の動特性の評価を行い、これらによる地震災害ポテンシャルに住居地域や主要な社会施設、居住者特性の分布をオーバーレイした結果、以下の結論を得ることが出来た。 (1)斜面危険度の予測については、斜面都市におけるメッシュ型GISデータの特性より、斜面住宅地の斜面崩壊予測に急傾斜地崩壊危険箇所数のデータを加えることが有効であることを示した。 (2)地震災害ポテンシャル評価を行った結果、斜面都市においては主要な道路や防災関係機関が多く存在する低平地部では、比較的軟弱な地盤や液状化の被害を受ける危険性が高い地域が多く存在し、また、山麓付近や住宅造成地では斜面崩壊の危険性が高いことを示した。 (3)地震災害ポテンシャルに住居地域や主要な社会施設、居住者特性の分布をオーバーレイ表示し、斜面都市が持つ地震災害に対するVulnerabilityとともに、特に斜面住宅地での消火活動の困難や非難・救助災害などの多くの問題を抱えている実態の抽出に活用しうることを示した。 なお、本研究成果については、日本建築学会構造系論文集投稿論文として1996年2月中旬に投稿済みである。
|