一般に木影の涼しさは、緑葉の日射遮蔽効果に加えて、蒸散による冷却作用と葉陰によって、樹木自体がつくりだす冷気の下降流によるものと考えられているが、前年度に行った屋外の局所空間に形成される夏の温湿度分布調査より、木影の冷気流は、日向樹冠で加温・加湿された軽量空気の上昇流に引き寄せられた上空からの下降冷気である可能性を知った。 本年度は、1.空気温湿度むらに基ずく密度分布から推定される熱対流型の空気流れを発煙法による気流観察によって確認し、2.下降冷気の周辺への滲みだしと散逸性状を調べ、3.低温地表を誘導路とする冷気の流れ道づくりの可能性について検討した。 微気候デザインの総合的な検討のために、前庭に典型的な冷気源である池や樹木群を有し、大庇に覆われたテラス空間を選び、その微気候の性状診断をもとに、前記の各項目について検討を進めた。 木影や水辺は、上空からの低温空気の降り口となっているが、その冷気は周辺の日向芝面などからの上昇温気に乱されて散逸し、一般に滲みだしの距離は極めて短い。しかし、樹冠と庇の連続した影に沿った冷気の流れはかなり遠くにまで及んでいることより、冷気の下降点に連続する地表を低温に保つことで、それを建物周りや散歩道などに導く「そよ風の道づくり」が可能となることを見いだした。
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