アジア大会等の理由で設置が遅れていた長期観測用の測定機器を、3月27日に設置し計測を開始した。設置した機器は、日射計、風向風速計、各1台と気温測定用の温度計4台である。初年度の予備実験から、気温の測定には通風ファンを稼働させることが必要と判断されたため、100V電源確保が可能なポイントに関しては工事を行った。サンプリング間隔は1分とし、約20日毎にノートパソコンにデータを回収した。測定は、1年間を計画しており、3月末までの予定で現在も継続中である。 測定期間については広島地方気象台の毎時データを入手し、合わせて解析を行った。日射計については、出力の経時変化が懸念されたため、気象台データとの比較検討を実施した。その結果開始後約2カ月間で5〜7%の出力低下が認められたが、それ以降は安定していることが確認された。 長期観測データの解析から得られた成果は、以下の諸点である。 (1)緑地の中心部は緑地の縁辺部に比べて周辺市街地からの気温低下が大きく、夏季日中には2.5℃程度に達する。 (2)緑地縁辺部には、周辺市街地の影響を受けているが、その度合いは風向で大きく左右されている。 (3)都市内河川の気温低下効果と比較すると、午後から夕方にかけては、緑地の効果の方が大きくなる。 (4)都市内緑地や都市内河川のもつ気温低下効果は、夜間の都市-郊外間の気温差に比べて小さいため、夜間は緑地内の気温も河川上の気温も郊外に比べて高温となる。 (5)対象緑地が常緑樹と落葉樹の混合林であるため、緑地の気温低下効果は、落葉の影響で10月以降小さくなる。
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