高速道路における道路交通騒音の制御は現在主に防音壁により行われている.この防音壁の高さを低く抑える目的で防音壁エッジに音響的に"ソフト"な円筒を取り付けることを考えた.そのソフトな円筒の効果を境界要素法を用いて二次元音場について解析したところ、回折角や周波数にも依存するが500Hzで15dB程度の付加的な減衰量が得られることが明らかとなった.このソフトな境界条件とは円筒の表面が音響的に見て空気よりもはるかに"柔らかい"ものであることを意味し、現実の建築資材では満たすことが出来ないものである.そこでこの条件を満たすために考え出された方法に1/4波長音響管を配列する手法がある.この方法を今の問題に適用するには、表面が円形であるため断面形が矩型ではなく、扇型となってしまう.この扇形音響管を円形に配列した場合についても境界要素法により解析したところ、約1オクターブの周波数範囲にわたって効果が見られた.この内容は二次元無響音場で実験的にも確認された.この音響管の音響的性質には周波数特性があるので、実際の道路交通騒音のスペクトルを考慮し、全周波数帯域での効果を数値計算したところ、防音壁より25m離れた位置で約7dBの効果となり、これまでの吸音性円筒に比べ4dB程度の増加が確認できた. 次に現在防音壁が実際建設されている状況を広く調査し、このソフトな円筒を防音壁に取り付けるにはどの程度のサイズになるか、またどの程度のサイズまで許されるかの調査をしたところ、従来の吸音性円筒(約50cmの直径)に比べて少し大きめのものでも全く違和感無く利用出来る見通しがついた. そこで実用出来るソフトな円筒の設計をするに先立ち、縮尺模型を用いた三次元無響音場における実験を計画し、無数に近い音響管を4mの長さの円筒上に配列した.その模型を用いた実験においても円筒の効果は解析結果とほぼ同等であり有効性が確認された.今後は実用のための実寸ソフト円筒を製作し、効果の確認が必要である.
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