研究概要 |
近年高速道路、主要幹線道路沿線での交通騒音は日増しに大きくなり、音環境として重大な問題となってきている。この状況を緩和する手段として防音壁が用いられているが、従来のものでは大きな遮音性能を得るためには、防音壁の高さを高くする必要があり、現在では8mもの高さを持つものが数十kmにもわたって建設されているところもある。そこで遮音性能が高く、防音壁の高さを低く抑えることの出来る防音壁の開発が望まれている。これに対し、エッジに吸音性円筒を取り付けることで遮音性能の向上を計る試みが既に行われ実用化されている。この研究ではさらに大きな効果が期待できる音響的に"ソフト"な表面を持つ円筒を防音壁エッジに取り付けることを試み、その円筒の実現とその実用性について研究することを目的としている。 平成7年度は実物大のソフトな円筒の製作を実行し、その効果の確認を行った。"水車型"と称する断面形を持つ円筒の表面音圧がゼロとなる周波数を観測したところ設計周波数500Hzに対して、630Hzで最小となった。これは溝底部をなす反射面が円筒面であり、定在波を考えるのに円筒波音場を考慮することにより説明出来た。また実用を考慮して屋外において利用するため、雨水の排水用開口部を溝底部に設け、また防音壁頂上になる円筒上部にごみ除けのための細いスリット構造を設けた。その各部が円筒の表面音響特性に及ぼす影響を計測したが、それらの影響はほとんど観測出来ず、ソフトな円筒表面が実現できていることが明らかとなった。この"水車型"円筒を実際の高速道路に設けられている高さ5mの防音壁エッジに200mにわたって取りつけた。その取りつけ前後における沿道での道路交通騒音レベルの実測を行ったが、エッジより数mまでの範囲であれば、この円筒の効果が明確に確認できたが、20m,40mと離れるにつれ、効果は激減した。この原因を検討したが、その一つとして円筒の取りつけ長が観測点のエッジからの距離に比べ非常に短かったことが考えられる。現在、他の原因について検討を加えている。
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