本研究は従来の老朽木造市街地を対象として再開発から、既に耐火造の中高層ビルの建ち並ぶ都市部の再開発が中心となるこれらの都市再開発において、建物の区分所有がその行方を左右するとの認識から、以下の課題を対象としている。まず、区分所有が持つ空間所有の自由性とそれが全体を構成する際にネガティブな要因との関連を調整し、高度な空間利用要求に応えられる空間構成システム、空間管理システムを構築することが求められる。そこでは、1)無隔壁型区分所有化、2)所有と利用の分化と調整システム、3)複数区分所有ビルの連結と再開発ビルの空間構造を解明することを課題としている。 調査の対象を区分所有を含む再開発建物を有する全国の市街地再開発事業地区14地区、民間開発の区分所有ビルやMXDを含む区分所有建物15地区(建物)を選定し、上記のテーマを解明することを目的に、建物調査、登記簿および権利変換計画書閲覧、再開発組合、関係コンサルタント、設計事務所等関係者のヒアリングを行った。 分析結果:区分所有を上記の観点から分析した結果、区分所有が多数の権利者が有するバラバラな権利を、利用者側の要求に添うようにまとめあげていくプロセスを3つのシステムに整理した。それは、1)隔壁のシャッター化・無隔壁化、2)後見人による所有権としての一括保全、3)共同管理による統制である。このシステムは所有権の抽象化として実現しており、それが目指す方向性(可能性)として以下の4つを確認した。1)物件的性格を維持しつつ、空間所有権としての(扱い易さ」と「広範な適用可能性」を併せ持つ、2)所有権及び建物の境界を越えた自由な空間創出の可能性、3)「関係性」の及ぶ範囲を自由に設定できる、4)「個別化」、「一体化」など様々な要素の共存を容認しつつ、全体を「共同体」として制御できる可能性。
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