今年度は、身体障害者福祉ホームの「仙台ありのまま舎」を対象にPOE手法を用いた調査を実施し、居住者の施設建築評価を把握して改善課題及び同種施設の計画指針を明らかにしようとした。 同施設(定員20名)は、重度の身体障害者が自分でボランティアを集め、入居料を払い、各々が独立した生活を営むという自立ホームをめざして設計された。居室はキッチン、トイレを含み、単身室(3×5.5M)16室、夫婦室(6.5×5.5M)2室でそれぞれ同一の平面からなる。 居住者の不満評価は、自立生活の大部分の行為が行われる居室に集中して表れ、介護ボランティアとの一緒の生活が必須のため、そして車椅子使用のため、その狭さに起因した問題点が抽出された。また、居住者の自立度や障害の種類・程度などの個人差が大きく、同一の平面の問題やトイレなどの画一的な寸法などが問題として表れ、設計計画における個別的対応の重要性が改めて明らかになった。 つまり、単身者といえども自立生活を継続するためには介護者との同居が不可欠となり、夫婦室と同程度の広さの居室を必要としていること、それが不可能な場合においては、車椅子使用を円滑に行うため、壁の両側に家具配置しても中央部で車椅子の回転寸法を確保できるよう4m以上の間口をとり、さらにキッチン、トイレなどの小集団での共用を進めること、キッチン、トイレなどにおいて可変型への対応を考慮することなどを実証的に明らかにすることができた。
|