研究概要 |
本年度はまず、過去に実施した、地下街および繁華街における経路探索の実験結果のまとめを行った。この実験は、被験者に対して指定した目的地までたどりつくことを課題として与え、探索過程における発言を記録するものである。得られたプロトコルを分析してみると、発言には発見と迷いの2種類の系列があり、サインや建築物などの視覚情報を積極的に利用することがわかった。また、迷いの状態を打開するために、とりあえず一時的な行動をとること、さらに,迷う場所とわかりやすい場所には偏りがあることなどが明らかにされた。 一連の実験結果から,経路探索のモデル化が可能になった。すなわち、経路は地点の連鎖に分節することが可能であり、各地点での探索プロセスを明らかにすればよいこと,また,そのプロセスは主体が持っているプランに基づいて,個人の記憶と周囲の環境から得られる情報,およびそこからの推論によって生成される情報を利用しながら行動を決定するという形にモデル化できる。そこで、これらの知見をもとに、LOGO言語を用いた計算論的モデルの構築を試みた。ここでは,主体に相当するものとしてタートルという仮想上の生物を考え、プランや記憶を情報として与えた。計算論的モデルは、(1)タートルが都市空間の手掛りを知覚する,(2)その情報を行動のプランや記憶している認知地図と照合する,(3)行動を決定して移動する,(4)必要であれば記憶している認知地図の修正を行う,といった一連のプロセスに伴う相互作用を反映できるように作成し,経路探索の実験結果を再現しうるように改変を加えていった。また,このモデルを用いて,様々な設定のもとでのシミュレーションを試みた。その結果、現地実験ではプロトコルに現れなかったプランや手掛りを明らかにすることができた。
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