1.研究の目的 痴呆性老人介護施設において、痴呆性老人が自立的に快適に過ごすための生活環境のあり方を探るために、施設空間の分かり易さについて検討することを目的とする。本年度においては、(1)自分の居室の認知方法の把握、(2)研究方法の有効性の確認、および(3)建築計画指針策定のためにヒントを得ることを目的とした。 2.研究の方法 平成6年度に行った調査と同様な方法により、新たに2つの痴呆性老人看護施設を対象として調査を実施した。調査に際して、色彩情報による場の認識の可能性をもとらえるように意図した。 3.主な研究結果 (1)質問調査や行動観察調査による研究方法は、軽度の痴呆性老人に対しては一定の有効性をもち得る (2)居室の探索行動の調査結果から見ると、居室やその周辺の「しつらえ」等の空間情報、および名札などの文字情報や色彩情報を居室認知の手がかりとしている例が多い。 (3)色彩情報については、赤・青・緑などの明確な色彩が有効で、それらが場の通称(赤コーナーなど)と一致していると認知されやすい (4)建築計画指針策定のためのヒントとして、 (1)居室群の位置は、共用空間に近く見通しの良い位置が望まれる (2)居室群の識別には、居室群としての「しつらい」や色彩による空間の差別化が有効である などの研究結果が得られた。
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