平成6年度は、研究手法についての詳細を検討する事に時間をかけ、研究手法の確立を図った。それにもとづき、当初の研究対象施設である特別養護老人ホーム2カ所(太陽の杜、扶桑苑)、病院2カ所(碧南市民病院、小牧市民病院)の計4施設を調査した。調査は、1施設10人の被験者で行い、計40人の被験者を各施設に連れていき、施設の指定ルートを歩行させ、ルート中の活気と落ち着きの構成要素を発話してもらい、同時にヘルメットにビデオを装着した装置を被験者に被らせ、実験中の被験者の視認物を記録した。この発話と視認物の比較検討によって、何に活気・落ち着きを感じ、何に感じないかを明確にした。 1.特別養護老人ホームの活気・落ち着きの要素・・・要素別に見ると、「活気の要素」は、最も感じられているものに、「のれん・看板」があり、次いで「天井の形態」、「談話コーナー」、「窓の外の畑の景色」、「家具」、「絵画」等の順である。「落ち着き」の要素には、最も感じられているものに、「空間のテクスチャー」があり、次いで「空間のスケール」、「窓の外の景色」、「ソファー・椅子等」等の順である。これらの中で、「景色」と「家具」は活気、落ち着きの両方であげられており、見る人の心理でどちらの要素にもなる事が分る。エリア別に見ると、「活気」は「食堂」で最も感じ、次いで「2階の廊下の一部」、「1階の廊下の一部」である。「落ち着き」は、「居室」で最も感じ、次いで「食堂」、「エントランス」の順で、ここで「食堂」は両方を感じさせる場になっている。 2.病院の活気・落ち着きの要素・・・要素別に見ると、「活気の」要素は全般に少なく、その中では、「スケールの大きさ」、「自然光」、「色」等に活気を感じている。「落ち着き」は、「木のテクスチャーの家具」、「外の景色」、「庭園」等に落ち着きを感じている。エリア別に見ると、活気が落ち着きを超えているエリアは無く、落ち着きは「中央庭園の横の廊下」、「病棟食堂」で最も感じられている。 3.今年度の実験では、上記の様に想定した実験で、活気・落ち着きを明確にとらえることができる事が分かった。また特別養護老人ホームと病院ではかなり異なり、特別養護老人ホームの方が活気・落ち着きの両方を感じられる空間として構成されている事が明らかになった。
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