当研究では特別養護老人ホーム4施設、それとの比較のために病院1施設の計5施設で、各施設10人計50人の活気・落ち着きの空間探索行動実験を行い、現状の施設の活気・落ち着きの構成状況とその問題点を把握し、今後の施設計画に反映すべき点を明らかにした。実験及び分析にあたっては、被験者の発話と視認を被験者が装着したヘルメットに固定したビデオカメラに録音・録画し、特に視認画像を秒単位でプリンターによってプリントし、視認物及び視認時間を記録・分析した。 <実験結果の分析> 1.比較的大きい空間における視認-食堂・談話コーナー等では、空間全体を見る「空間視」、空間の1部を見る「空間要素視」、家具等の要素を見る「要素視」がほぼ1/3づつと多様性が現われる。 2.廊下空間-単調な廊下は前を見る「空間視」、中庭等が見える廊下は「空間+要素視」と要素の印象が強い「要素視」となる。 3.施設内で「活気」を感じさせる要素は、建築構成部位では「天井のデザイン」、「天井の形(吹抜)」、「壁の材質(ガラス等)」、「扇の色」があり、しつらえでは「掲示物」、「天井の照明のデザイン」、「リハビリ器具」があげられ、デザインの変化と色使いで活気を感じさせている。 4.「落ち着き」を感じさせる要素は、空間全体では「材質(木製)」、周辺環境で「外の景色」、建築構成部位では「壁の材質(木製)」「床(木目調)」、「手摺」、「居室の扉(木製)」「座敷の畳」があり、しつらえでは「風景画」、「植え栽」、「家具類」はそのほとんどが落ち着きと評価されている。 以上の結果から、今後施設を計画する場合には、各部分の活気・落ち着きのゾーニングを行い、上記の結果を応用することが可能となった。
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