前年度では、各国の国家規格を対象に、建築関連を全体の中で位置づけ、そして建築関連規格の内容を明らかにした。今年度は、以上の研究成果を発展させ、変貌が著しく、国の垣根を取り外す「ボ-ダレス社会」が象徴する国際化社会の中で、国家→周辺諸国→国際の領域を研究対象に設定し、国家規格の役割(機能)が今後如何にあるべきかを明らかにした。さらにボトムアップ型の規格のあり方を捉えるために、民間企業→団体・学会→国家規格の流れの中から国家規格の新たな役割についてもふれた。 上記の目的に沿い、国際関係では国家規格としてドイツのDINを、近隣諸国規格としてヨーロッパ規格のENを、国際規格としてISOを分析の対象に設定した。これは、3つの規格が地域的条件から「入れ子」のような構造にあること、さらにこの3つの規格が「国際標準化コード(ICS)」に準拠した分類方法を持っていることによる。研究結果からは、いずれの規格であっても直接的に「物」を規定しないソフトな内容に関する規格が多く、中でもENやISOにあってはこの割合が全体の80%以上を構成していた。さらに一国の国家規格であるDINでもソフト規格が60%を超え、今後の国家規格の進むべき道が、個々の技術開発を抑制しない総括的な立場を推進することにあるとの知見を得た。また、一国内の規格制定の領域性でも、米国では民間の開発と自主的な品質管理を基調に国家はこれの全体を総括するシステムをもっており、我が国を始めとする国家管理が細部にまで及ぶ方式は改善されるべきとの結論を得た。また国内にあっても147団体により4467件の規格が制定されていることから、米国と同一レベルとならないまでも、民間を基調としたボトムアップ型の規格を認める方式に国家規格は変貌すべきといえる。
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