本研究は、市街地再開発によって整備される都市内空地が、良好な都市環境創出に貢献するための計画について、イメージ形成予測の観点から支援することをテーマとした。 イメージ調査は、SD法を用いた空地内でのアンケート方式とし、対象は熊本、福岡及び大分の市街地の計31空地、被験者総数234名である。この結果、空地の評価は、評価順序によって直前の空地のイメージに影響されること、同一の空地でも視線方向を特定すると視野によって評価が異なること、天候の異境はほとんど見られず恒常的再現性が得られること、等が明らかとなった。 次いで、空地に対する心理評価構造について多重線型効用関数を用いたファジィ解析を行った。これは、線型性を仮定した回帰分析等では扱えない説明指標間の相乗効果や相殺効果を含めて、総合的に指標の貢献度を分析するものである。その結果、空地の評価構造を開放感、落ち着き、計画性、自然感、周辺との調和、の5項目と、それをブレークダウンした23項目の指標を用いて2段階で解明できた。例えば、空地に対する「好き-嫌い」は「落ち着き」と「計画性」が強く作用し、それに「自然感」が加わることで相乗効果を生んでいる。また、角空地、線状空地、凹型空地、中庭型空地、公園、ピロティ型空地という6種の空地タイプ別の評価構造を得た。 さらに、空地に対して「魅力的である」と感じさせる空間構成要素を抽出するための、物理指標と心理指標の関連性分析を行った。この結果、例えば、空地の外周長さに対する「人のは入れる部分の割合」という指標の値を高くすると、明るい、目立つ、利用しやすい、などの感じを抱かせる傾向がある。ただし、関連性分析とそれに基づく空地のイメージ予測では同様の物理的状態にある空地サンプル数が不十分であるため、高い信頼性の得られる結果とはならなかった。
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