聾学校は、聴覚に障害があり通常の学校教育の指導方法では適応できない幼児・児童・生徒に対して、適切な教育環境を整え教育を行う場である。そこで、聾学校の施設面において基本となるものは、一般学校に要求される施設諸条件に加えて、聴覚障害に対する補償を基盤とした施設・設備を備え、児童・生徒の能力や特性を、それぞれの生長・発達の段階に応じて十分に育てることのできる豊かな学校環境の形成にあるといえる。 本研究は、このような視点に立ち、聾学校での多様な活動がより適切に展開しうるような建築設計・計画の基礎的資料とするために、平成2・3年度科学研究(一般c:代表平根孝光)における分析結果にもとづいた“施設の使われ方"の調査・分析を通して聾学校の特性について明らかにしようとしたものである。 本年度は、平成2・3年度科学研究において設置学部(幼稚部・小学部・中学部・高等部)の構成をもとに分類した「学校タイプ」を軸に聾学校施設の使われ方の調査を実施し分析を行った。なかでも学習集団及び生活集団の編成については、クラスを単位とした集団を基本としながらも、同一授業時間内において個別に取り出して学習指導を行う「取り出し学習」、2学年合同、3学年合同等の集団編成がみられた。特に幼稚部では、通常の3才〜5才児クラスに加えて0才児からの指導を教育相談という形で行っていること、その集団は幼児、教師、さらに幼児の母親も加わった構成となること等において多様な集団編成がみられた。次年度においては、さらに調査データの収集・分析を行い、これら聾学校施設の特性を把握することが課題である。
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