聾学校は、聴覚に障害があり通常の学校教育の指導方法では適応できない幼児・児童・生徒に対して、適切な教育環境を整え教育を行う場である。その聾学校の施設面において基本となるものは、一般学校に要求される施設諸条件に加えて、聴覚障害に対する補償を基盤とした施設・設備を備え、児童生徒の能力や特性を、それぞれの成長・発達の段階に応じて十分に育てることのできる豊かな学校環境の形成にあるといえる。 本研究は、このような視点に立ち、聾学校での多様な活動がより適切に展開しうるような建築計画上の指針を示すことを目的とした研究の基礎的段階にあたるものとして、聾学校にみられる特性を、施設の使われ方の調査・分析を通して明らかにしようとしたものである。 調査は、聾教育上その効果が最も期待されている0才〜5才児を対象とした早期教育部門に焦点を絞り、全国レベルでの実態調査を実施し分析を行った。その分析結果のなかでも、次のような聾学校早期教育部門における特性をみることができた。(1)0才〜2才児教育相談は、この時期の教育効果が高いことから、学校教育法上では対象外となっているものの、幼稚部を設置している殆どの聾学校で指導が行われている。(2)その学習集団は、母親に対する指導が主となることから、母親+聴覚障害乳幼児+教師の学習集団を基本単位としている。(3)指導形態は、その基本単位での指導となる個別指導およびグループによる指導の2形態であり、オ-ジオロジーに基づいた指導法により指導が行われている。(4)3才〜5才児幼稚部では、学習集団に母親の加わることは変わらないものの、大中小の学習集団、「取り出し学習」を含む個別指導等の多様な学習集団を編成し、聴覚活用学習を中心とした指導が行われている。
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