2年間の研究活動により、以下のような研究成果をあげた。 1 日本にある清朝の建築に関する〓案史料の所在先を明らかにし、日本所在の建築〓案リストを作成した。 日本国内の図書館・資料館等の所蔵目録の調査から、東洋文化研究所所蔵が最も多く、まとまりのある清朝建築〓案史料を所蔵しており、ほかにも国会図書館などが若干所蔵していることが判った。 2 東洋文化研究所所蔵の清朝建築〓案史料について、その来歴、史料の種類、分量、内容を明らかにし、リストを作成した。 本史料は、北京在住の日本人建築家荒木清三が入手し、中国建築史家の竹島卓一らの仲介で東方文化学院東京研究所(東洋文化研究所の前身)により購入されて現在に至ったものである。本史料は大きく分けて、文書と図面があり、文書は全416冊と20函、図面は軸物の形で50本ある。内容は、天壇、恵陵、西陵、北海など、清朝が行った多くの建築に関する設計資料、積算資料、工事日誌、設計図面など多岐にわたる。 3.清朝の建築に関する〓案史料の分析・研究により、清朝が行った建築の全過程及び、設計行為の特徴を明らかにした。 清朝の行う建築は、皇帝の命が下ると、敷地を測量し、〓様といわれる紙の模型や地盤様という図面、做法清冊という文書を用いて設計を行い、工事中及び竣工後には特使が派遣されて検査が行われていた。また宮殿や皇室の庭園の建築設計には、皇帝などが自ら筆をとり意匠案を描いたこともあった。建築の工事は、木厰と呼ばれる民間の組織が一括して請け負った。
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