研究概要 |
昨年度の予備的研究において検討したル・コルビュジエの作品の中から、建築・場所論的にとくに意味深いと思われる3作品、すなわちVilla Savoye(1929), Chapelle de Ronchamp(1951), Couvent de la Tourette(1957)の制作事例に注目して、これらの設計から建設に関するル・コルビュジエの厖大な書簡をル・コルビュジエ財団(パリ)で検索し、それらの書簡の解読を行い、データ・ベース化した。このル・コルビュジエ文書の解読から、Archive, Garland pub. & Fondation de Le Corbusier, 32 volsおよびLe Corbusier Sketchbooks, 4 vols, MIT PressとLe Corbusier, Disegni Dessins Drawings, Officina Edizioni, Romaに公表されているスケッチ、図面等の制作の時系列的順序を整理しル・コルビュジエの制作意図を少なからず明らかにすることが可能になった。この成果から、ル・コルビュジエの作品制作の過程を、とくにConvent de la Touretteに即して記述し、その全制作過程を、素材(質料的)と形相(量的・イデア的)のarchetypeから、存在の生成の諸相を通して「肉化encarnation」し、構造化して、現実的形態となって現象し、意味を表し、建築的風景となって現成する諸様態を、archeからtelosへの動態として記述した。こうした建築作品の制作、建築的環境の生成、建築的風景の現成から、そうした一連の動態の「おいてある」ところの「場所」を、理論的に主題化することを、Genius Lociの概念、プラトンのkohraおよび「西田哲学」における「場所」的論理の解釈によりながら試みた。この試みは、制作する建築家の自己実現の立場に立つのであり、この立場から、ル・コルビュジエの建築家としての自己実現を具体的作品に即して論じることが出来るようになっと考える。これらの研究成果は、既発表論文をもとに、それに新たに得られた知見を加えて学術論文として公表する用意をしている。
|