研究概要 |
越前藩主松平家にかかわる建築についていくつかの知見を得た。おもな点を列挙すれば以下の通りである。 1.最大の成果は、福井市内の瑞源寺(臨済宗妙心寺派)に福井城本丸御殿の御小座敷と御座の間がそれぞれ本堂,書院として現存していることを確認できたことである。この二棟の御殿は天保2年(1831)につくられたもので、幕末の遺構ではあるが、福井城にかかわる建築はまったく現存していないとの従来の通説を覆すとともに、この成果により福井城の建築を具体的に知ることができるようになった。 2.また、『松平文庫』所蔵の天守指図より福井城天守の建築的詳細を検討し、御家門かつ68万石という越前藩の本拠を象徴するにふさわしい、四重五階、高さ92尺余の壮麗な天守を図上に復元することができた。 3.さらに福井城の諸建物の幕末から明治初頭における残存状況、その後の変動についても解明することができた。 4.その他、明治から大正期、戦前にかけて松平家は旧城内に農業試験場を営むが、その教場や寄宿舎の建築についても復元案を示すことができた。 5.しかしながら研究題目にある越前松平家にかかわる建築を総合的に考察するまでには至らず、以上のような新知見とすでに一部、明らかにしている松平家の御霊屋や江戸屋敷などを含めた、越前松平家の建築の総合的考察は今後の課題として残った。
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