平成6年度には、まず(1)大面積・絶縁体超薄膜のスパッタ成膜プロセスの検討を行なった。そしてSiO_2およびMgO(厚さ5nm〜20nm)絶縁膜中にAuの細線構造がパルス電界印加によって成長する事実をSTM(走査型トンネル顕微鏡)によって確認した。さらに、(2)Nb/SiO_2(15nm)/NbNを形成し断面TEM(透過型電子顕微鏡)により電界印加前後の電極膜構造変化を比較観察した。(研究発表の雑誌論文参照) 特に(1)の場合はSi(100)基板上にバッファー層としてCu(30nm)その上にAu(100nm)正極膜、絶縁体膜SiO_2SまたはMgO(10nm)をスパッタ成膜し、さらにAuと合金化困難なA1を負電極(2mmφ)として電子ビーム蒸着し液体InGaにより電気的接触を行なった。8-10V、0.1msecのパルス印加後、絶縁から有限抵抗への変化を確認した。この絶縁破壊しきい値は絶縁体膜厚に対し線形に増加することが分かった。この試料を本科研費により購入したダイヤモンドカッターにより高精度に切り出し、酸により絶縁体膜以上をエッチングし、Au表面をSTM観察した。電界未印加に比べて電界印加後で絶縁体膜の厚さに対応する突起形成が確認された。この事実はMOS-FETのゲート部酸化物層の絶縁破壊の現象に対応していると考えられる。 平成6年度は上記成膜プロセスの確立に大部分の時間を費やした。その結果成膜プロセスによっては絶縁破壊しきい値が減少する事実が明らかとなった。この原因究明は絶縁体超薄膜の特性制御にとって重要である。平成7年度ではこれらの結果を踏まえて量子効果の確認や電界蒸発物質のちがいによる差異を検討する予定である。
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