金属/絶縁体/金属(MIM)積層構造において、絶縁体膜厚が数nmの場合、金属間に数〜数十Vの電圧を印加するだけで、数MVもの電界が生じ金属の絶縁体膜中への電界蒸発が起こる。この時、積層膜は絶縁状態から導通状態へ変化し、低温ジョセフソン接合においては量子細線構造の形成がその微分コンダクタンス測定において予想された。 本研究はこの事実を確認すべく、Siウエファー上にバッファー層としてのCuそして下部電極膜としてのAu膜を成膜し、さらにその上に厚さを変えてMgOまたはSiO_2膜の絶縁体薄膜を形成し、その上に上部電極としてAl膜を積み、電極間に液体InGaにて電気的接触を実現し、Dcパルス電界を印加して、電気抵抗変化を調べた。その結果、電界蒸発電界(V_t)、と絶縁体膜厚(t)の間に、MgO膜の場合は、V_t[V]=0.44[V/nm]・t[nm]+4[V]、SiO_2の場合は、V_t[V]=0.7[V/nm]・t[nm]+4[V]、と実験的に求められた。さらに膜厚10nmの絶縁体膜において電界印加後の積層膜を下部Au電極表面を残して化学エッチングにより取り除き、その表面を走査型トンネル顕微鏡(STM)にて表面形態を観察した。その結果、導通状態に変化した試料のAu表面はnmスケールで凹凸が発生し、中には数nm径の量子細線構造に対応する形態も観察された。 以上、本研究によって電界印加による電極表面形態誘起の条件及び形態変化の事実が始めて明らかにされた。
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