研究概要 |
クラックと結晶欠陥の相互作用を解明するため,本年度は転位ならびに侵入型原子がクラックの進展抵抗に及ぼす効果について研究を行った。得られた結果は次のように要約される。 1.転位の活動しやすい純粋なNaCl結晶では,クラックは断続的に進展し,その先端形状は湾曲・ピン止めを繰返しながら進展する。転位の動抵抗を高めたNaCl-NaBr混晶結晶では,クラックは停止することなく速く進展する。 2.NaCl結晶において,転位活動はクラックに対して遮蔽場のみならず反遮蔽場の形成をもたらす。これは転位の運動とクラック先端からの転位生成の相対的な難易度に依存し,転位生成の容易な高温では遮蔽場を形成し靱性向上に寄与するが,低温では反遮蔽場形成によって靱性低下をもたらす。 3.侵入型原子が等方的歪みを持つとして計算すると,そのクラック近傍への集積は反遮蔽場をもたらすことを示すが,その場の強さは大きくはない。しかし,侵入型原子が正方歪みを持つとして計算した結果,その原子のクラック近傍への集積は強い反遮蔽場の形成に寄与することを示した。この結果から侵入型原子が正方歪みをもつと考えられるBCC金属中の水素や窒素原子がクラック近傍に集積すると,強い脆化作用をもたらす可能性のあることを指摘した。 以上の結果をそれぞれの項目毎に整理・考察し,成果を印刷公表した。
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