研究概要 |
1.母相強度に対する組成,結晶粒径及び温度の影響 3Y-TZP,12Ce-TZP及び,これらの中間組成の(Y,Ce)-TZP3種類について,結晶粒径を種々調整し,ビッカース硬度測定を行った.硬さは,Ceの増加(Yの低下)とともに減少するが,減少割合はCeの増加とともに大きくなる.個々の組成について,硬さは温度の上昇とともに直線的に低下し,結晶粒径に関してはホール・ペッチの関係式に適合する.室温における1450℃焼結試料を基準として,硬さの温度及び粒径依存の近似として次式を得た. 3Y-TZP: Hv=1250-0.9(T-293)+100(d^<-0.5>-1.21) 12Ce-TZP: Hv=950-0.68(T-293)+430(d^<-0.5>-0.72) ここで,Tは絶対温度,dは結晶粒径(μm)である. 2.マルテンサイト変態温度及び駆動力に対する母相強度の影響 前述の試料は,高温で焼鈍された一部を除いて液体窒素温度までの冷却によって変態を誘起できなかった.そのため,0〜3Y-TZP試料を用いて,AsおよびMs温度の測定を行った.1450℃焼結試料について,変態温度は次式で近似できる. As[K]=1459-269Y(0≦Y≦3),Ms[K]=1279-364Y(0≦Y≦1.5) ここでYはY_2O_3のモル%である.As温度は広い組成範囲に亙って直線的に変化するのに対して,Ms温度は1.5Yを越えると急激に低下し,2Yは液体窒素温度でも変態しなかった.このようなMs温度の急激な低下はTo温度の組成依存性や,母相強度の温度依存性のみによって説明することが困難である.さらに変態の核生成挙動を明らかにする必要がある.
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