研究概要 |
絶縁性セラミックスの電気伝導度を担う電荷担体の易動度及び濃度を測定することを目的として実験を計画した。用いた試料は高純度アルミナ及びその単結晶である。これら材料の電気伝導は主として電子により担われると考えられてきている。しかしながら通常の条件ではその電気伝導度は極めて小さく(10^<-13>Sm^<-1>以下程度)測定が困難であることから,放射線照射下で測定することを試みた。放射線照射下ではいわゆる照射誘起伝導(フォトコンダクティビティと類似の現象)により大きな電気伝導が得られる。 放射線下での絶縁性セラミックスの電気伝導度測定は極めて困難であるが,種々の工夫により高精度で測定することを可能とした。開発された手法により放射線照射下で10^<-11>Sから10^<-4>S程度までの幅広い領域での電気伝導度測定が可能となった。この手法を用いてこれまでに,照射誘起電気伝導度の結晶依存性等についてデータを取得した。また,照射下では伝導度に大きな極性が現れる場合があることを見いだした。この極性は結晶粒界ないしは電極界面におけるチャージアップ,もしくは結晶欠陥へのチャージトラップ,または電極界面付近での電荷担体の集積によるものと推定される。今後の解析から電荷担体に関する定量的な情報が得られるものと期待される。
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