研究概要 |
初年度の取り組みはおおむね順調に推移したが、新しい原料化合物の探索のために当初の研究計画に加えていた中心金属(Sn)に種々の置換基を導入することは成功に至らなかった。そこで、出発原料には我々が従来から使用してきたジブチルすずジアセテートとテトラブチルすずに限定して研究を進めた。これら二つの化合物の熱分解過程は蒸気圧測定と質量分析を用いて解析された(I.Yagi et al.,J.Mater.Res.,1994)ので、方針を一部修正し、申請したガスクロマトグラフィーの代わりにより均質な成膜が期待される噴霧熱分解装置を新しく試作することにした。しかし、新規に設計・発注したこの超音波噴霧装置の作業条件を速やかに確定することができず、結局、成膜も従来から使用している二流体式アトマイザーを用いることを余儀なくされた。この様な経過の後、酸化すず配向膜の形成ならびに得られた膜の構造を成膜条件と関連付けることには十分成功した。次年度は、酸化すず配向膜の電気的・光学的性質を明らかにするとともに、特に電気的性質の改善のためにアンチモンやフッ素のド-ピングの役割に注目し、重点を置きながら研究を進めた。その結果、ガラス基板上の配向透明導電酸化すず薄膜の形成に関する基礎的知見を得たので、今後、その有用性を明らかにする予定である。これまでに得られた成果は第42回応物春季年会(1995.3,平塚)で発表したのを手始めに、都合四回学会で公表した。また、酸化すず配向膜の形成条件や原料化合物と優先配向面の構造との関係などについてJ.Am.Ceram.Soc.他に論文3編を投稿し、採択されたが、目下さらに1編を投稿準備中である。上記の通り、二年間にわたる本研究の目的はほぼ達成されたと判断している。
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