スピネル型酸化物であるLiMn_2O_4の充電過程における結晶構造の変化をX線回折パターンに対するリ-トベルト法により詳細に検討した結果、リチウムの脱離に伴い分解反応がわずかであるが生じることを明らかにした。また、この分解反応が主にMnイオンの状態変化と関係していることを示した。すなわち、Mnイオンの溶出が生じていることを明らかにした。また、電子スピン共鳴法を用いて調べた結果、Mn^<2+>イオンの生成が確認され、Mnイオンの関与した分解反応が生じていることが分かった。この結果はリ-トベルト解析により得られた結果と一致していた。次に、このような分解反応を抑制するために、結晶構造を安定化させることが必要であると考え、超格子構造の導入によるスピネル結晶の安定化を試みた。本研究では、Li_<4/3>Mn_<5/3>O_4の組成を有するスピネルMn酸化物の合成を行った。その結果、500℃付近の温度で酸素雰囲気下で焼成することにより、LiイオンとMnイオンが規則的に配列した超格子構造を有するスピネル型Mn酸化物の合成に成功した。この化合物へのリチウムの挿入・脱離反応についてX線回折法により調べた結果、結晶構造が無限小に抑制されていることが分かった。また、上述の分解反応も生じていないことがX線回折法および電子スピン共鳴法により分かった。さらに、電気化学的に重要な因子である電極電位のリチウム挿入・脱離に伴う変化を調べた結果、リチウム組成に依存せず、ほぼ一定の値を示すことが分かった。すなわち、超格子構造を持たないスピネル型酸化物に比較して、超格子構造を有するスピネル型酸化物が、リチウムの挿入・脱離に対してより高い安定性を示すことを明らかにした。このような結果は、これまでにまったく報告例がなく、本研究において始めて明らかになった事実であり、リチウムの挿入・脱離反応に対する新規の合成指針を示すことができた。
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