1、研究の目的:誘電体薄膜を対象に薄膜成長面にエネルギービームを照射しながら薄膜を合成し、薄膜の物性及び表面微構造の変化を原子間力顕微鏡(AFM)などを用いて評価し、照射の効果とその素過程を明らかにする事を目的に、本年度は以下の研究を行った。 2、研究実施内容:複合イオンビームスパッタ(IBS)装置を用いて組成が単純で素過程の解析が容易な、AlN誘電体薄膜を窒素イオンビームを薄膜成長面に照射しながら合成した。窒素イオンビームのエネルギー、照射量、照射角度、基板温度などのプロセス条件による表面微構造の変化をAFM装置で、また合成薄膜の結晶化並びに配向性をX線回折装置(XRD)で評価した。また電子サイクロトロン共鳴(ECR)スパッタ装置を用いてダイヤモンド状炭素(DLC)誘電体薄膜を各種条件で合成し、表面微構造をAFMで観察した。この研究を通じて以下の事が明らかになった。 (1)合成されたAlN薄膜の光学特性は、照射イオンのエネルギーと基板温度に依存するが照射角度依存性は少ない。結晶配向性は、照射角度に大きく依存し、照射角度が45〜60deg.ではAlN(110)に、70〜90deg.ではAlN(100)に優先配向した。 (2)AFMで薄膜合成初期の表面微構造を観察した結果、初期段階は基板の影響を強く受けるが順次AlN(110)面に配向した表面構造に移行している。 (3)DLC薄膜の表面構造は、数10nmの微細結晶よりなり、Arスパッタガスへの酸素ガスの混合比が大きくなるほど、黒鉛のエッチングが進み光透過率の向上と表面微構造の変化が観察された。
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