【目的】この研究は、生体機能材料として最も基礎的なリン酸カルシウムガラスとその結晶化ガラスの超音波物性を解明することによって、優れた人工骨・人工関節・人工歯などを創る基礎を確立することを目的とする。 【実験】リン酸カルシウムの化学組成をxCaO・(1-x)P_2O_5で示す。この研究では組成範囲がx=0.25〜0.50のガラスを以下の方法で作製した。最初に、所定量のH_3PO_4とCaCO_3をテフロンビーカー中で湿式反応させた。反応物をアルミナるつぼに移し、予め500℃で熱処理した後、1300℃で熔融し2時間保持した。この融体をカーボン型に流し込み直径15mm、長さ25mmのバルクガラスを作製した。このバルクガラスをガラス転移温度でアニーリングした後、密度・超音波速度などの物性測定を行なった。更にガラスの結晶化温度を示差熱分析によって決定した後、バルクガラスを結晶化温度で熱処理して結晶化ガラスを作製した。個々の結晶化ガラスについて密度・超音波速度などの物性測定を行なった。特に、超音波速度の測定確度を向上させる目的で、超音波パルスエコー重畳法の改良を行なった。標準物質として高純度シリカガラスを用いて超音波速度を測定したところ、有効数字4桁まで精密に測定出来ることが判明した。 【結果と考察】上述のガラスと結晶化ガラスについて超音波速度、超音波吸収係数、超音波速度の温度係数、密度、熱膨張係数を測定した。特に、密度と超音波速度の測定値からヤング率、剛性率、体積弾性率、ラ-メ定数、ポアソン比、音響インピーダンスを決定し、リン酸カルシウムガラスとその結晶化ガラスの力学物性を明らかにした。
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