電子機器分野における高分子材料に対して効率的かつ経済的に導電性を付与することは、電磁波障害や静電帯電などの対策として有用である。そこで、新たな発想による導電性のポリマー/金属系アロイの開発を図るため、熱可塑性ポリマーと低融点金属の融液ブレンド系の非相溶混合高次構造と金属融液相の流動変形挙動の実測と粘弾特性に基づく理論解析を行ない、ブレンドによる高次混合構造制御と導電性との関係を検討して、次の結果を得た。 (1)ポリマーと低融点金属融液の機械的混練により、ポリマー基材中への金属融液粒子(数μm)の均一分散構造が得られ、30vol%以上まで安定な分散エマルジョウン状態を保ち得た。これらの金属融液の分散微粒子の繊維状への変形とその絡み合い接合による金属網目構造形成に基づく導電化を試みた。 (2)モデル実験として、透明なポリスチレン融液中に数個の金属融液の球状粒子を配置し、せん断応力および伸長応力下での変形挙動の可視化による観測と流動解析を行なった結果、せん断流動場では金属融液粒子中での内部循環流動の発生や変形粒子の両端部での球状微粒子への細分化のなどのために充分な繊維状変形が得られないのに対して、伸長流動場では金属融液粒子の効果的な変形が生じ軸比の増大が顕著であることが確かめられた。 (3)実際のポリマー/金属ブレンド融液の流路押し出しにおいて伸長流動工程を加えることにより、金属微粒子の変形による繊維状分散構造が得られた。この後で流動方向性を乱して繊維を交叉、接合することで網目構造の形成を図った結果、現段階ではまだ不完全で顕著な導電性を得るまでには至らなかったが、その可能性は確認し得た。 (4)本研究の応用として、これらのポリマー/金属融液ブレンド系に固体金属の繊維微粒子を加えることにより、比較的低配合率で優れた導電性が得られ、固体金属繊維充填による加工性の低下も軽減し得ることが確かめられた。
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