角柱状の樹脂マトリックスの表面近傍にカーボン繊維を埋蔵した試片に、4点曲げ法を適用して、繊維の破壊ひずみより大きな引張ひずみあるいは圧縮ひずみを与え、その時生ずる破断片の長さの平均値と、引張りおける破断片の長さから引張強度のバラツキを考慮して計算した平均引張強度を用いて、カーボン繊維の軸方向圧縮破壊強度を推定した結果、次のことが明らかとなった。 1.推定したカーボン繊維の圧縮破壊強度は、環境温度が上昇するにつれて見かけ上減少する。この原因は、樹脂の熱膨張係数がカーボン繊維のそれより大きいために、繊維の半径方向に生ずる拘束力が温度の上昇とともに減少するためである。 2.拘束力をゼロまで外捜することによって、真の圧縮強度を推定した。 3.推定された圧縮強度は、繊維径が小さいほど大きくなる。この傾向は、ポリアリレート系繊維でも同じであった。 4.繊維に表面処理及びサイジング処理を施すと、見かけ上、繊維の圧縮強度は大きくなる。なお、6年度は、繊維の引張強度は均一として、圧縮強度を推定した。7年度には繊維の引張強度のバラツキを考慮して圧縮強度を推定し、表面処理及びサイジング処理の影響を検討する予定である。 なお、6年度以前に、繊維の引張強度を均一として推定した圧縮強度は、結晶子の厚さを小さくするほど、結晶面の間隔及び配向度を大きくするほど大きくなることを明らかにした。
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