本研究は、強度、弾性率、耐熱性に勝る全芳香族ポリアミド(アラミド)を強化材とするシリコンゴム複合材料を開発することを目的とし、平成6年度より7年度までの2年の研究成果である。アラミド/シリコンゴム界面の密着力の強化を図るアラミドの表面改質法は、低温プラズマを用いたリモートプラズマ(ラジカルシャワー)処理表面改質によって可能であることを見いだした。まず、アラミドのプラズマ処理によっておこる表面の改質の化学的変化を検討した。プラズマを照射すると、アラミド表面は親水性に改質されるが、これは電子衝撃によりアミド結合の切断がおこること。この分子鎖切断はシリコンとの密着力改善には障害となること、を明らかにし、電子衝撃の少ないラジカル種が中心となる改質法の開発の必要性を示した。つぎに、ラジカル種を表面改質法へ利用する手法の開発にとかかった。この開発は、プラズマの中から表面改質に主要な役割を果たすラジカル種を分け取り、表面改質に利用するリモートプラズマ処理技術で具体化した。はじめに、リモートプラズマ技術の理論的な意味づけをした後、この結果を基に、ラジカル種が改質の中心となるリモートプラズマ表面改質装置を試作した。このリモートプラズマ表面処理装置の有用性を、ポリテトラフルオロエチレンの脱フッ素化処理、ポリエチレンの表面塩素化処理、有機シラン化合物からのSiOx薄膜の合成などで実証した。最後に、このリモートプラズマ表面改質装置によって、アラミドの表面が効果的に親水化されること、表面の形態観察からも表面処理前後で表面形態の変化が少ないことを明らかにした。これらの結果は、リモートプラズマ処理が効果的に表面親水化を可能とし、かつ電子衝撃が少ない表面処理技術であることを物語っている。
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