研究概要 |
X線法の特徴を生かして,レーザ溶射,プラズマ溶射等で形成される耐熱傾斜機能材料の残留応力を観察し,積層化条件が傾斜機能膜の残留応力に及ぼす影響を解明し,また,高温からの急冷およびレーザビームによる熱衝撃試験により,積層化条件,残留応力,熱衝撃疲労特性の関連性を調べ,X線応力測定法による耐熱傾斜機能材料の評価技術の確立を目的としている.同時に,有限要素法を用いて空隙などの欠陥が存在する溶射膜の残留応力を解析する方法を確立することが課題である. 平成6年度の研究は鉄鋼基板上にレーザ溶射したNiCrからAl_2O_3に変化する積層膜において,溶射膜のX線応力測定上の問題点を見出すことを主眼においた.セラミック系溶射膜の場合は空隙の存在,各溶射粒子間の密着性などにより膜自体が不連続であり,膜としての力学的特性を保有しないことなど,X線的に測定された応力の評価をどのようにすべきか十分考慮することが必要であることが明らかになり,次年度に残された課題となった. 一方,有限要素法を用いて溶射膜の残留応力の解析手法を確立することを試みている.まず,2次元軸対称問題として単一溶射層連続体モデルを仮定し,熱サイクルをかけた場合の溶射膜の熱応力変動を解析した.さらに,次の段階として,本科学研究費補助金で購入したワークステーションを用いて積層膜の残留応力の解析を進めているところである.現在まだ公表できる結果を得ていないが,溶射層のような空隙の多い不連続体に対するモデルを検討中であり,適切な解答が得られるよう努力している.
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