研究概要 |
平成7年度は,前年度と同じ0, 5, 10, 20%の4種の炭素繊維強化熱可塑性ポリイミド樹脂材料について,母材樹脂の結晶化がFRPのクリープ特性に及ぼす影響,並びにホットウェット処理の機械的性質への影響を検討した。 樹脂の結晶化が粘弾性特性に及ぼす影響については,前年度に完成した任意の結晶化度の試料を作成する方法を用い,結晶化度が0,15,32%の材料を準備して3点曲げ試験法により,クリープ特性を研究した。各繊維混入率の材料ごとに結晶化度を変えた結果,12種の材料が得られ,それぞれについてマスター曲線の作成を試みた。その結果,結晶化した材料でも繊維混入率ごとに一本の曲線を描くことが可能であり,すべての材料においてアレニュウス型の温度-時間換算に準じるを明らかにした。結晶化が樹脂母材の弾性係数の変化を与える影響はわずかであり,またコンプライアンスの値へも極めて限定された影響を与えるにすぎなかったが,クリープ挙動については繊維混入効果と同様,粘弾性特性の発現を制約し長時間側にシフトすること,すなわち粘弾性挙動が発生しにくい方向に変化することを定量的に示した。また同一結晶化度の材料では,繊維混入率が異なっても,すべの曲線がコンプライアンス軸シフトファクタと時間軸シフトファクタの2つのシフトファクタを使用することにより,1本のマスター曲線を作成し得ることを明らかにした。さらに,繊維混入率と結晶化度をシフトファクタとして全体で1本のマスター曲線の作成を試みたが,結晶化度の影響によりマスター曲線群は一本には載らなかった。これは,繊維の分散のように結晶化の発生が一様でなく,繊維の量により発生機構に変化が起きていることを示唆しており,今後より詳細にこの機構の解明が必要であることを明らかにした。 また,ホットウェット処理の機械的性質への影響を検討した。室温,50℃及び80℃の3種の温度条件で前年度に購入した恒温恒湿装置を使用して相対湿度(50%, 70%, 90%)での吸水量の定量的評価を行い,時間的変化がフッィクの拡散則に準じること明らかにした。短時間でのクリープ試験には影響は観察されなかったことから,長時間クリープ試験を現在も行っている。
|