研究課題/領域番号 |
06650765
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
複合材料・物性
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
末益 博志 上智大学, 理工学部, 教授 (20134661)
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研究分担者 |
郷津 勝久 上智大学, 理工学部, 助手 (40178439)
間島 理 上智大学, 理工学部, 助手 (90053678)
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研究期間 (年度) |
1994 – 1995
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キーワード | Composite material / Delamination / CAI / Buckling / Post buckling / Fracture mechanics / Reyleigh-Ritz Method / Finite Element Method |
研究概要 |
平成6〜7年度にわたって「複合材料積層板の衝撃損傷後の圧縮特性劣化メカニズムと材料設計」というテーマで研究を行た。本研究の特徴は、近似理論の提案と有限要素法を用いた破壊挙動のシミュレーションおよび解析理論と対応させたモデル実験を行ったことである。 まず3種類の複合材料に関してモデル実験を行い、座屈及び座屈後の挙動を観察した。剥離を有する板では座屈後の変形に伴い急激に増加する破壊力学的な量(エネルギー解放率)が剥離の荷重と直交する方向で材料の靱性に達し最終破壊を引き起こすなど、衝撃損傷による圧縮強度劣化のメカニズムに関して多くの知見を知ることができた。また剥離した板の実験方法に関してノウハウを蓄積することができた。 近似理論解析および有限要素解析を行って座屈と座屈後の挙動を解析した。近似理論ではRayleigh-Ritz法という半解析的な手法を用いた。本方法により層間剥離の大きさ・剥離数・剥離形状などの剥離のパラメターと圧縮座屈との関係をパラメトリックに研究し、衝撃損傷に伴う圧縮強度劣化に関して多くの知見を得ることができた。しかし座屈解析だけからは破壊挙動を完全に説明することはできず、座屈後挙動を明らかにする必要があることが結論づけられた。有限要素法による解析は、3次元のソリッド要素を用いた非線形解析であるだけでなく層間剥離部の接触問題をも考慮しなければならないという非常に困難な数値解析であったが、座屈後の挙動だけでなく、層間剥離部に生じるエネルギー解放率をも求めることができ、層間剥離を有する複合材料積層板の破壊メカニズム解明のための非常に価値ある知見を得た。 実験および有限要素法により得られた座屈荷重はReyleigh-Ritz法による近似解析結果と非常によく一致しグローバルな挙動を考える場合には本近似理論で十分精度が得られることが保証され、本近似解析の効率を考えると非常に有効な手法であることを示すことができた。また有限要素法解析によって得られた圧縮挙動は実験で観察された複雑な挙動をよく説明し、実際の破壊メカニズムを同定する上で三次元の有限要素法を用いることが有効であることが確認できた。しかし解析に要する時間が膨大になるので2次元板要素等を用いて破壊力学的な量を求めるなどの手法を開発することが今度の課題と考えられる。 CAI (Compression After Impact)問題を明らかにしていくために、今後は衝撃荷重による損傷累積過程と関連させて、圧縮挙動劣化メカニズムの研究を進める必要があると考える。
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