研究概要 |
窒素侵入型化合物であるSm_2Fe_<17>N_x化合物、R(Fe,M)_<12>N_x化合物(R:希土類元素、M:遷移金属元素)は高い磁気的性質を示すため次世代の永久磁石材料となる可能性を秘めている。しかし工業的にみて磁石化の問題点としては、(1)単相が得られにくいこと、(2)結晶粒径を単磁区サイズに制御しなければならないこと、(3)Nd-Fe-B系磁石に比べ飽和磁化、残留磁束密度が若干低いことなどがあげられる。そこで本研究では合金組成を化学量論組成からFe-rich側の組成にシフトし、メルトスパン法を用いることにより、磁気的にハード相である化合物相、ソフト相であるFe相を微細に析出させ交換相互作用を働かせることにより、高い磁気特性が得られるSpring磁石作製の可能性について検討した。なお今年度の方針としては作製条件を確立することにある。実験方法は以下の通りである。Sm_<2-δ>Fe_<17>CおよびNd_<1-δ>Fe_<11>Mo_<1-δ>組成合金をアルゴンガス雰囲気中で高周波溶解し、インゴットを作製した。1000から1100℃で50時間の均質化処理後メルトスパン法にて急冷薄帯を作製した。400〜1000℃で結晶化熱処理を行い、400〜600℃で窒化処理後磁気特性を測定した。出現相の同定には、X線ディフラクトメータを用いた。得られた結果を要約すると以下の通りである。 1.Sm-Fe-N系急冷薄帯ではα-Fe相とSm_2Fe_<17>(C,N)_<17>相からなる2相領域し600℃以上の結晶化熱処理により得られる。 2.600℃5分間の結晶化熱処理後450℃4時間の窒化処理したSm_7Fe_<88>C_5N_x急冷薄帯においてiHc=269kAm^<-1>、(BH)max=70.1kJm^<-3>なる磁気特性が得られた。 3.Nd-Fe-Mo-N系急冷薄帯では、Nd(Fe,Mo)_<12>相、α-Fe相の結晶化温度はそれぞれ600℃、500℃である。 4.900℃30分間の結晶化熱処理し、550℃4時間の窒化処理したNd_<0.9>Fe_<11>Mo_<0.9>N_x急冷薄帯においてiHc=240kAm^<-1>なる保磁力が得られた。
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