◯二次イオン質量分析法(SIMS)による水素分析:前年度に水素分析用標準試料として採用したプロトンを打ち込んだシリカ皮膜中の水素分析を二次イオン質量分析法により行い、最適分析条件を明らかにした。水素分析のためには、一次イオン種、検出二次イオン種の選定の他に、一次イオン照射ラスターサイズや二次イオン採取領域が分析精度に影響を与えることがわかった。 ◯酸化速度測定:化学気相析出法により合成した炭化ケイ素および窒化ケイ素の酸化速度に及ぼす水蒸気分圧および酸素分圧の影響を明らかにすると共に、酸化過程で形成される酸化皮膜の分析をX線回析、顕微ラマン分光法により行った。水蒸気分圧上昇および酸素分圧減少に伴い、酸化速度は増加した。この原因は、酸化皮膜(シリカ)中のミクロ的な欠陥構造が酸化雰囲気により変化するためと考察した。酸化皮膜のX線分析により、雰囲気中に存在する水蒸気は高温(1873K以上)では酸化皮膜の非晶質化を促進し、低温(1373K付近)では結晶質化を促進することが明らかになった。また顕微ラマン分光法による酸化皮膜断面観察により、湿潤雰囲気中において形成される酸化皮膜は皮膜/材料界面においては結晶質相(クリストバライト)、皮膜/ガス界面においては非晶質相(非晶質シリカ)という二重構造を有することを明らかにした。つまり、雰囲気中に存在する水蒸気は結晶質シリカを非晶質化し、その非晶質化がシリコン気セラミックスの耐酸化特性を劣化させるものと考えられる。
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