金属材料のリサイクル性向上のためには枯渇性資源から製錬される金属の使用を極力控えた単純組成合金の多目的利用化が望ましい(平成6年度日本金属学会秋期講演会にて発表)。本研究では上記の考え方から単純組成低合金鋼(Fe-Si-Mn-C)を選び、組織制御によりカバーし得る引張特性の範囲を調べ、すでに蓄積した鉄鋼メーカー6社との系統的共同実験に基づく単一組織鋼の応力-ひずみ曲線データベースを利用し複合組織鋼の応力-ひずみ曲線をマイクロメカニックスの手法を用いて予測した。 Fe-C-Si-Mn鋼を用意し、まず多段恒温変態熱処理を基本としてミクロ組織を広範囲に変化させる目的で、その基礎となる恒温変態挙動を調べた。組織状態を解析し定量測定を行った後、引張試験を行い、同一成分でカバーできる特性範囲を検討した。 一方、Eshelbyの介在物問題とMori-Tanakaの平均場の考え方を用いてMises型の塑性法則を用いてマイクロメカニックスの手法で複合組織鋼の変化を解析し、secant法を利用して予測方法の計算プログラムを作成した。実験結果と計算結果の比較により予測の精度が良いことを確認した。本年度は、特に3相以上からなる多相組織鋼の特性を畳み込み法で計算する手法および組織形態による特性範囲の上下界を検討した。 上記の結果に基づいて、単一組成鋼の多目的化のための組織設計を予測モデルにより試み具体的にエコスティールの組成を検討した(平成7年度日本金属学会および日本鉄鋼協会の春季講演大会にて発表)。合金設計に関する予測方法の進展に関して得られた上記の2つの研究成果は本年3月の鉄鋼協会春期講演大会にて発表する。
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